Actaeon

暗がりの奥で 顎をあげて こちらを見つめる 
瞳の光がきらめく それが あなたの
最後の姿
暗がりにふみこみ 人影のなかにすれちがう
あの瞳は もう二度とない
うしなわれた あなたの影の

奥へ 奥へ ふみこむ迷路は 終わりのない光
に満ちて 人影だけが とおりすぎる
見ず知らずの 他人の体をとおりこして
あの花 あの影 あの闇
を さがしつづける

私を引き裂いた大いなる姿 は 偶然の賜物
森の中で見出した あどけない口元
繻子の髪は波打って 弓なり
の姿態は 驚きにみたされている

息を奪い のびる指先に
自らを語る声は止み
引き裂かれる私の体 
かろうじて視界に消える あなた
は 影のない光



だから今日も 時をこえ
過去と現実が とめどなく出会う
他者たちの檻 をさまよう

窓からの光 しかない迷宮
から 逃げる こともできず
餌を嗅ぐ動物のように 這い回る
賑やかな他者ども 泥酔した偶然
似姿のあふれる 出口のない城

今日も森の中をさまよおう たとえ
この世が光で満ちようとも
この眼が その姿をさがしあてるまで
影のない足跡だけをつける 
狩りをはじめよう

さがしだした そのとき
訪れた偶然が もう一度くりかえす
窓のむこうに覗く あなたの尊大な顔
その指先は 怒りにたわみ 唇は今やなまめかしい 
瞳の光に復讐を宿し 鎖を引きちぎって
みずからの名を呼ぶ声 高らかに
この場所でふたたび
誇らしげに 

を引き裂く